家族がアルツハイマー病だったり、周りに重大な病気の人がいるとどうしても「遺伝」かもと心配になったことありませんか?
アルツハイマー病は基本的には遺伝よりも生活習慣、環境因子に関連して発症すると言われています。あまり深刻に遺伝を心配する必要はありませんが、ただ少数ではありますが遺伝による発症もあり、家族性アルツハイマー病として報告されています。現在では様々な原因遺伝子の研究が行われており、複数の遺伝子が関連することがわかっており、アルツハイマーの遺伝について解説します。
アルツハイマーと遺伝
アルツハイマーの遺伝による発症は1%程度とされており、非常に少ないものです。遺伝で発症する家族性アルツハイマー病は一般的なものと区別するのは難しいといわれています。ただ遺伝性の場合は発症年齢が低いことが多く、60歳以下での発症が多いのが特徴です。
現在のところ様々な研究から家族性アルツハイマー病を発症する遺伝子が判明しており、APP遺伝子、プレセレニン1遺伝子、プレセレニン2遺伝子の3つがあることが確認されています。遺伝によるアルツハイマー病は一般的なものと大きな違いはありませんが、若くして発症して、症状の進行が早いという特徴があります。
また原因遺伝子ではないのですが、発病に強い関連を示す遺伝子も同定されています。家族性アルツハイマー病の患者の解析からApoE遺伝子が病気の発症に関わっていることが判明しました。この遺伝子にはε2、ε3、ε4のタイプが存在することがわかっています。しかもこのApoE遺伝子は通常の人も持っています。現在のところε4タイプのApoE遺伝子を持つ人は3〜7倍アルツハイマー病になりやすいといわれており、注意が必要です。ただしApoE遺伝子を持っているからといって必ずアルツハイマー病になるわけではありません。適切な予防を行えば、発症を防ぐことは可能です。
また最近では保険外診療でApoE遺伝子を検査することも可能になっており、不安な方は検査してみてもいいかもしれません。
アルツハイマーの遺伝以外の要因
アルツハイマーの最大の危険因子は加齢といわれており、年齢ともに発症率が上昇するといわれています。家族内に同じ病気の人がいた場合、その子供は6倍程度危険性が 上がると報告されています。
発症の危険を上げる因子としては脳出血や脳梗塞などの脳血管障害、糖尿病、高血圧、喫煙、肥満、頭部外傷がいわれています。また中年期の高コレステロール血症も危険因子といわれていますが、薬による予防効果ははっきりしていません。
逆に危険を下げる因子としては教育歴、余暇の過ごし方、肉体的な活動、地中海食が挙げられます。またNASAIDsと呼ばれる消炎鎮痛剤の内服がアルツハイマーの発症を抑えるのではといった報告もあります。
アルツハイマーは遺伝的な要因もありますが、やはりそれ以外の生活・環境因子が発症に深く関わっています。では予防するにはどんな生活習慣がいいのでしょうか?